運動療法
運動療法(心臓リハビリテーション) 目次
  1. 運動療法(心臓リハビリテーション)とは
  2. 心臓リハビリの効果
  3. 心臓リハビリへの思い
  4. 心臓リハビリの適応
  5. 心臓リハビリの流れ
  6. 費用
  7. 心臓リハビリを受けられた患者さんの例
  8. 心臓リハビリQ&A

1.運動療法
(心臓リハビリテーション)とは

あなたはずっと薬だけをもらう外来に不安を感じませんか?
薬だけに頼らずに運動療法を取り入れたい・・・運動で健康的に生きたい!、出来るなら薬を減らしたい!そんな願いはありませんか?

けど医院で医者の話を聞いても運動を薦めてくるけど、どんな運動が良いのか、どれくらいやれば良いのか具体的な説明もなく途方に暮れていませんか?

もしあなたが
「運動は良いのは知っているけどどうしてよいのか分からない・・・」
「心臓が悪くなってから何をするのも不安がある」
「病気をする前の自分を取り戻したい!」

こんな思いをお持ちでしたら是非、当院の運動療法である心臓リハビリテーションについて詳しくお話を聞いていただけませんか?

例えば正しい運動療法を3か月続ければ、長年飲んでいる薬を減らせる可能性があることをご存じですか?こんなメリットはほんの一例です。
ご興味が少しでもある方は続きを読み進めていただければ嬉しいです。

そもそもリハビリテーションというと、スポーツ選手が怪我から復帰するために行うものであったり、脳卒中などによって麻痺した手や足を動かすためにやるもの、というイメージが強いと思います。

ですが先ほど申し上げたように心臓血管に病気を患ってから昔のように行動できずに悩まれている方は実はケガや脳卒中後の麻痺で困られている方たちと同じくらい沢山いらっしゃいます。
そんな方はもう昔の自分を諦めないといけないのでしょうか?

そんな事はありません!!

確かに心臓が傷んでしまった方の運動はむやみに行うと危険です。
しかし危険だという気持ちだけで運動を行わないとどんどん体は弱ってしまいます。
そうならないために「あなたの心臓の状態に合わせた、安全かつ効果的な運動メニュー」 それが 心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)です。

つまり 心臓がものすごく傷んでしまった方でも安全に行い改善に向かえるのが心臓リハビリの特徴です。
昔は急性心筋梗塞や心不全を起こしてしまった方は、入院し入院中の治療で退院できるようになると後はもう1人で頑張ってという状況でした。
一部の軽症の方を除きどうしても社会復帰は遠のいてしまう事が多かったのが現状でした。しかし病気をして社会から隔絶されて終わり?諦めてしまってよいのでしょうか?あなたの人生をもう一度楽しんでほしい。それが心臓リハビリの原点です。

「もう一度趣味のゴルフをやりたい」
「孫と一緒に公園で遊びたい」
「友達と一緒に旅行に行きたい」

このような願いを叶えるための方法が退院後の心臓リハビリにあります。
心臓リハビリはただ運動するだけではありません。あなたが思い描くゴールを目指し、必要であれば禁煙や減塩指導など、心臓疾患を増悪させる因子に対する生活指導や、心理サポート介入なども行いチーム一丸となりあなたのゴールまでの伴走を行います。

もしあなたがここまでお読みくださって「心臓リハビリなんか聞いたことない」「信じられない」と思われているなら、それが当然かもしれません。
というのも心臓リハビリをご存じの方はまだ日本では7%しかおらず本当に必要な方の4~8%程度にしか届いていないのが現状です。是非心臓リハビリについて知ってもらいたいことがあります。



2.心臓リハビリの効果

心臓リハビリは大変効果的です。というのも心不全や心筋梗塞の患者さんでとても効果的であった薬剤とほぼ同等の生命予後改善効果が認められています。
例えば心筋梗塞後にβ遮断薬やACE阻害薬を飲まれている方が殆どだと思います。それらの薬は劇的に生命予後を改善したことが報告されておりそれで心筋梗塞の患者さんにとって無くてはならない薬となっています(余程の理由がなく投与されていないのは本当にあり得ないくらい)。
それと同じくらいの効果である心臓リハビリはまだまだ普及していません。ちなみに心臓リハビリをすることで心臓による死亡が36%。心筋梗塞の再発が47%減少することが報告されています。
薬のような副作用もないので是非やっていない方はやるべきだと思います。

また狭心症の症状があり動くと胸苦しく運動することが不安な方もいらっしゃると思います。カテーテル治療で症状をとることができますが実は運動による治療がカテーテルよりも予後が良いことが分かっています。
(※カテーテルが不要であるという事ではありません。)
なぜかというとカテーテルでは局所の狭い血管を拡げることは出来ますが本質的な動脈硬化治療ではないからです。運動により動脈硬化改善を促すことが次の虚血性心疾患イベントを減らします。



また心不全患者さんも運動耐用能(どれだけの強度の運動に耐えられるか)や長期生命予後、精神的ストレスそれらの改善が報告されています。特筆すべきは心機能が低下していたとしても改善率に差はなくむしろ最初の運動耐用能が低下している人ほど改善率が高かったという点です。つまり心臓が悪いからあきらめるのではなく寧ろ悪いからこそしっかり取り組むことで生活が改善する割合が多い事が分かります。




それでは何故このような効果が出るのでしょうか?


● 血圧、脂質、糖質代謝異常の改善

当たり前ですが運動をすることで血圧悪化を防げる事や脂質代謝の改善効果があります。



● 骨格筋の発達

こちらも当たり前ですが運動をすると筋肉が発達します。
ここまでは容易に想像がつくと思いますがそれ以外にも様々な効果が確認されています。


● 血管内皮機能の改善

運動をすることで血管内の一酸化窒素合成酵素(NOS)が増加することが確認されています。NOSは血管拡張効果があります。また運動によって新しく血管が作られるように働きます。
運動を止めるとNOSは1か月ほどでもとに戻ってしまいます。


● 炎症、酸化ストレス改善

継続的な運動によってCRPという炎症蛋白の低下や活性酸素種(ROS)という血管収縮を起こす物質の産出を抑制します。



● 自律神経への好影響

運動をすることで自律神経のバランスが交感神経優位から副交感神経優位に変化することが分かっています。その結果不整脈出現の抑制などが期待できます。


以上以外の効果も確認されており心臓リハビリの薬に頼らない効果を得ることができます。



3.心臓リハビリへの思い

私は尼崎市でクリニックを2020年に開院する前は大阪の「国立循環器病研究センター」「住友病院」などでカテーテル治療をはじめ急性期治療を行ってきました。
心筋梗塞や心不全で今にも死にそうな方が自分の治療で劇的に改善し九死に一生を得たという医師冥利に尽きる経験をたくさんさせてもらいました。
しかし治療を終えて退院してからの外来診察では患者さんはやはり息切れが強く元々の生活に戻れてない。仕事を変えざるを得なくなった。
そういった方もいらっしゃいました。

九死に一生を得たことは素晴らしいことだと今でも思います。しかしおとぎ話であれば、「シンデレラは王子様と幸せに暮らしました。めでたしめでたし」ですがシンデレラもその後の生活の方が長く、物語で語られない部分が大切です。それと一緒で患者さんにとっては治療後の生活が一番大切です。治療する医師にとっては良くしたら物語は終わりかもしれません。しかし今の私たちはその後の生活をサポートする、あるいは心筋梗塞や脳梗塞などの悲劇物語が始まらないようにするのが仕事です。

なぜ心臓リハビリについてこのようにお話するかというと、当時にどうにかして患者さんの「元の生活を取り戻したい」そんな思いで探し当てたのが心臓リハビリです。

心臓リハビリはこのように以前の日常生活を諦めてしまっている方にとって大変有意義な治療法になります。しかし大病院では行われていてもなかなか広いスペースが必要で町の診療所では行えていないのが現状でした。
現在も必要な患者さんのうちリハビリを行えているのは4~8%程度と言われています。

2020年本院を開院した際にこれからは心臓リハビリを提供し、地域の心臓病の予防に努めたいと思っていました。しかし開院と同時に新型コロナウイルスの大流行で部屋での集団行動が行いにくくなってしまいました。
ですので心臓リハビリの設備は整えていたのですが、感染の事を心配するあまり積極的に行えておりませんでした。
すこしコロナが落ち着いた際には患者さんが予想以上に来院してくださる状況になっておりお一人お一人に心臓リハビリを丁寧に提供する私自身の時間がもう残ってはいませんでした。
そういった状況で心臓リハビリが良いのは分かっているけれど中々できないという忸怩たる思いの中、今回心臓リハビリの専門家で近畿中央病院で心臓リハビリの立ち上げに関り運営も担われていた、循環器専門医、心臓リハビリテーション指導士の森本先生にご協力を頂けることになりました。

より広いスペースで安全に運動リハビリを提供したいという思いで交通の便が良い塚口の地に心臓リハビリを併設した新規医院を立ち上げることになりました。

今後心臓リハビリを通じて地域の患者さんがより安心して健康管理をできるように少しでも貢献できればと思っています。

本院も塚口院もスタッフ一同患者さんの安心して笑顔になれるクリニックであるために精進致しますので是非よろしくお願いいたします。



4.心臓リハビリの適応

以下の疾患が、心臓リハビリテーションの保険適応となっています。
特に年齢制限などはございません。動いたときに胸苦しい、息苦しいという方は勿論、過去に心臓や血管の手術をしている方で少しでも不安がある方は是非お問い合わせください。


  1. 急性心筋梗塞後
  2. 狭心症
    冠動脈のカテーテル治療(ステント植込み術など)後も含まれます。
  3. 心臓術後
    冠動脈バイパス術、弁膜症手術、心臓移植などが含まれます。
  4. 慢性心不全
    保険適応となる慢性心不全として
    (1)左室駆出率40%以下、(2)血液検査でBNP 80pg/ml以上または NT-proBNP 400pg/ml以上、(3)心肺運動負荷試験(CPX)における最高酸素摂取量 80% 以下、のいずれかの条件を満たすことが必要です。
    逆に、3条件のいずれかを満たすことで、不整脈や慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)などの疾患でも、慢性心不全として心臓リハビリを受けることができます。
  5. 大血管疾患(大動脈瘤、大動脈解離など)
    大動脈瘤術後、急性大動脈解離術後などが含まれます。
  6. 末梢動脈疾患(症状のある閉塞性動脈硬化症)
    足の動脈が動脈硬化で狭くなり、歩くと足がだるくなる病気です。足がだるくなる病気です。
  7. 経カテーテル大動脈弁置換術後
    重症の大動脈弁狭窄症(大動脈弁が硬くなり十分に開かなくなる病気)に対して実施するカテーテル治療のことです。

またこれらの病気か分からないけれどリハビリをしたいという方もお声がけ下さい。


5.心臓リハビリの流れ

電話かネットからご予約頂き、医療法人社団SHIGYO MEDICAL 尼崎塚口もりもと循環器内科・内科を受診して頂きます。

身長、体重、血圧測定、胸部レントゲン、心電図、血液・尿検査の後に医師が診察し、リハビリが可能な状態かメディカルチェックを行います。

事前に、患者さん毎に最適な運動強度を決定(運動処方)するために、心肺運動負荷検査を実施します。(連携病院での実施)
※リハビリテーションは別日に行います。

当院の心臓リハビリテーション室にて、血圧・脈拍・体重を測定し、モニターを装着して運動前のストレッチを行います。 (約5分)
※心肺運動負荷検査とは別日で行います。

最初は軽い自転車こぎから開始し、徐々に負荷量(時速やペダルの重さ)を上げ、最終的には心肺運動負荷検査で決定した最適な運動強度まで負荷量を増やします。(約30分)

筋力トレーニング(自重やゴム運動などを使い、上肢・下肢の筋力を鍛えます)(約20分)

整理運動 (約5分)、運動後のメディカルチェック(血圧、脈拍、体調のチェック)のお手伝いをいたします。


6.費用

●保険適応者

1割負担 約700円
2割負担 約1,400円
3割負担 約2,000円
※保険の自費負担率により金額が変わります


●保険適応外の方

・当院で月に1-2度来院されている方は1回の施術は保険適応価格とほぼ同額の2,000円(税別)となります。

・それ以外の方は1回の施術が4,000円(税別)となります。


7.心臓リハビリを受けられた患者さんの例

<75歳の女性>
患者さんは1年前まで友達と旅行に行ったり卓球をしたり老後を満喫されていました。しかし心筋梗塞を起こしてから生活は激変されました。カテーテル治療で一命は取り留めましたが、動くと息切れがして今までのように友達との付き合いをすることを諦めていらっしゃいました。
しかし子供さんが何とかしてあげたいと調べてくれて心臓リハビリに出会うことができました。最初は半信半疑でした。軽い負荷の自転車漕ぎやチューブを引っ張る運動を中心に小一時間運動をするだけでした。しかし徐々に運動機能の改善が起こり3か月もたつと階段の上り下りが楽になり半年後には卓球を再開する程になりました。
今の彼女は心臓リハビリは卒業していますが当院の外来でどこに旅行に行ったかを嬉しそうに教えてくれます。


<70歳の男性>
患者さんは59歳の時に心不全を起こされました。その後薬物治療で日常生活に復帰し仕事も定年まで勤められました。最近になり息切れが強くなりかかりつけ医に相談しましたが、これ以上の治療はないと言われ途方に暮れていらっしゃいました。
当院で心臓リハビリをご提案すると、当初は「こんなに息切れしているのに運動なんか無理だ」と懐疑的でした。しかし心肺運動負荷検査の結果を用いて行うことで最初は運動とは言えないレベルからのスタートでしたが、徐々に息切れが改善しました。
現在は卒業し定年後の趣味としてサイクリングを楽しまれています。サイクリングの方が心臓リハビリよりもハードとのことです。


8.心臓リハビリQ&A

Q.運動をしても本当に大丈夫ですか?

A. 心臓リハビリは安全ですので心臓に不安がある方も安心して受けていただけます。
心臓リハビリは正式な運動処方を行われた方では277,721人・時間あたり心筋梗塞や心停止、死亡は0件であることが分かっています。


Q.どれくらいの費用がかかりますか?

A. 心臓リハビリの適応の方は保険適応となります。
1回の来院で1時間の運動を行うとおおよそ3割負担の方で1800~2700円、1割負担の方は600~900円です。


Q.どれくらいの通院頻度が必要ですか?

A. 運動は回数が多いほうが良いとされています。少なくとも週に1~3回は継続する事が大切です。


Q.どれくらい続ける必要がありますか?

A. 効果を実感するのは人によって差がありますが3か月ほどで運動能力の改善や日常生活での変化を感じる事が多いです。心臓リハビリを開始後150日が 保険適応ですが、必要な患者さんは150日を超えても継続する事ができます。



尼崎塚口もりもと循環器内科・内科